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バークリーに留学する日本人 〜音楽を共有するベーシスト 斎藤大陽さん〜

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今回は、バークリー音楽大学に留学中のベーシストの斎藤大陽(さいとう まさあき)さんにインタビューをさせて頂きました。斎藤さんのバークリー入学時のエピソードや、アーティストのツアー参加のお話など、詳しくお伺いしてきました。

(記事 仲田祐基)

斎藤大陽さんの経歴

東京都生まれ。
ジャズ、ラテン、ポップスなど全てのジャンルでオールマイティに活動するベーシスト、キーベースポレイヤー、作編曲家。Xotic Guitars US アーティスト。

山田耕筰の血を引き、祖父はイラストレーター、両親はクラシックギタリストというアーティスト家族に生まれる。幼い頃から両親の影響もありピアノ、クラシックギターを学び13歳からベースに転向する。
神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校、高等専修卒業。

2016年、日本で行われたオーディションののちバークリー音楽大学から学費免除の全額奨学生に選ばれ2016年9月から留学中。学校ではPerformance/Jazz Composition を専攻する。
2019年5月18日に発売されたJesus Molina” Agape”にEric Marienthal, Randy Brecker, Mike Stern, Antonio Sanchez等の有名ミュージシャンとともに参加。
2019年9月から2020年2月にかけて行われる、Grammy winning artist Noel Schajrisのワールドツアー LoMejorDemi Tourにベーシストとして参加中。

共演アーティスト。
Jack Dejohnette, Keyon Harrold ,Darren Barrett, Kenny Werner, David Fiuczynski, Leo Blanco, Luis Quintero, Jesus Molina, Junshu Zheng, Noel Schajris, 青野紗穂,草ヶ谷遥海

斎藤さんが参加されているAkai製品のプロモーションビデオ

「自分の空いている時間をいかに見つけて、課題を終わらせていくかを常に考えていました」

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-所属されている学科、専攻楽器について教えて下さい。

学科は、パフォーマンス・メジャー(演奏学科)とジャズ・コンポジション・メジャー(ジャズ作曲学科)の2つを専攻していて、主にエレキベースを演奏していますが、音楽のジャンルによってはシンセベース*を演奏することもあります。今年の夏セメスター*は授業を取らずに、学校内で伴奏のお仕事をたくさんしていますね。

*シンセベース…ベースパートを演奏するためのシンセサイザーのこと。エレクトリックベースの代わりに用いられることがある。

*セメスター…学期のまとまりのこと。バークリーでは、春・夏・冬の3学期があり、人によって入学時期も違うため、セメスターで分けることが多い。

なぜ、その2つの学科を選ばれたのですか?

バフォーマンスに関しては、僕がもともとベーシストを目指しているのもあり、バークリーに入学する前から専攻することを決めていました。ジャズ・コンポジションに関しては、高校生の時からジャズという音楽が好きでしたし、「自分の曲を作曲したい、ジャズの理論の深いところを学んでみたい」という思いもあり、専攻することを決めました。

2つの学科を専攻するのは、大変ではないですか?

とっても大変ですね(笑)特にジャズ・コンポジションは、1つ1つの課題に時間がかかるので、ライブでの演奏の機会が増えてくると、それに追われて課題をやる時間がなくなってしまう…。前学期は、自分の空いている時間をいかに見つけて、課題を終わらせていくかを常に考えていました(汗)

バークリーの特徴として、複数の学科を専攻できることが挙げられますが、その分忙しくなってしまうんですね。

正直、パフォーマンスだけにしておけば良かったかなと思う部分もありますが(笑)、ジャズ・コンポジションでしか学べないことも多く身につけることができたので、今はそれで良かったと思っています。

「自分は運がよかったと思っている部分が大きいのですが…」

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ドラマーのジャック・ディジョネットとの1枚

斎藤さんの経歴を拝見すると、多くのアーティストやプロデューサーの方々と共演されていますよね?それは、どのような経緯で共演されることになったのですか?

基本的には、バークリーの友達や先生からの紹介というのが多かったです。たとえば、キーヨン・ハロルド*ジャック・ディジョネット*などのミュージシャンと演奏させてもらえたのは、アンサンブルの授業を取っていた先生から、直接声をかけて頂いたのがきっかけですね。あとは、僕は2015年の夏に“ファイブウィーク”というバークリーの夏期講習に参加しているのですが、その時に友達になった人が、有名歌手のバンドメンバーとして、推薦してくれたこともあります。

*キーヨン・ハロルド…100枚を超える作品に参加するトランペッター。ツアーではコモン、ビヨンセ、ジェイ・Z、エミネム、ディアンジェロらと共演している。

*ジャック・ディジョネット…マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなどのジャズのレジェンドと共演したジャズドラマー。近年では、エスペランザ・スポルディングやライオネル・ルークなどの若手ミュージシャンとも演奏している。

学校の先生や友達とつながりを持ったことが、きっかけだったのですね。

そうですね。学校側も、外部からアーティストを呼んでイベントやライブをする時に、「できるだけ平等に生徒に演奏する機会をあげよう」という風潮があるので、それも大きかったと思います。あとは、別の部分だと伴奏者の仕事をしているという面もありますね。

伴奏のお仕事とは、どのようなものなのでしょうか?

今の夏の時期もそうなのですが、夏期講習がある時の伴奏や、学生の試験の伴奏、あとは学校主催のイベントの伴奏等ですね。学校のオフィスに行って、自分を伴奏者として登録すると、そのオフィスのスタッフの方から連絡が来て、それで伴奏をするという流れです。

それで、そのオフィスで伴奏の仕事をしていると、たまにそのスタッフの人から「今度こういうイベントがあるんだけど、リズムセクションとして演奏しない?」という連絡をもらえることもあります。そこからつながった縁も多くありますね。

試験やイベントでの伴奏もそうなのですが、バークリーの学校自体も、生徒を育てよう・チャンスをあげようという雰囲気を作っているのですね。

僕自身は、たくさん友達や先生と演奏して、つながりを増やしているだけなので、「自分は運がよかった」と思っている部分が大きいのですが、周囲の人たちにこいつは信頼できる」と思ってもらえれば、自然と演奏させてもらえる機会は増えてくるのかなとは思いますね。

「両親からはすっごく怒られました(笑)」

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斎藤さんは、バークリーの入学時に手続きで苦労されたということをお伺いしたのですが…?

そうなんです(笑)単純に、入学手続きをやっていなかっただけなんですが、要はチェックインに必要なお金を支払っていなかったんです。

そのチェックインとはどのようなものですか?

現地で行う、入学するための最終手続きですね。バークリーは、学費以外にパソコンや付属のソフトウェア、保険などの諸経費を入学時に支払わないと、入学させてもらえないんですが、僕は、そのお金を払うことを全く知らずにバークリーに来てしまい、授業が始まって2週間ぐらいはチェックインができない状況でした。

それは大変でしたね…。その後どう対応されましたか?

銀行の口座をすぐに開設して、そこに両親からお金をすぐ送金してもらいました。それで、なんとか支払い期限ギリギリに間に合ったのですが、両親からはすっごく怒られました(笑)

それでも、無事に入学できて良かったですね(笑)しかし、入学資料も全て英語で書いてあるので、しっかりと読んでいないと、そのようなミスは誰にでもあるかもしれませんね。

他の人はどうか分からないですが、僕は、英語を本当に勉強しないでアメリカに来たので、余計に注意しないといけなかったですね(汗)

「やらかしたー(笑)」

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-斎藤さんは、アンサンブルの授業を多く取られているということをお聞きしたのですが、その授業のレベル分けとして “レーティング・オーディション”というものがありますよね。それについてご説明して頂けますか?

レーティング・オーディションというのは、入学した全ての生徒が最初に受ける楽器の試験です。試験内容としては、ジャズのスタンダードや自分が持ち込んだ曲を演奏します。バークリーでは、その試験の結果によって生徒が1—8にレベル分けされ、 数字が高い人ほど取れるアンサンブルの授業が多くなります。

なるほど。ちなみに、斎藤さんのオーディション結果はどのような感じでしたか?

僕の最初のレベルは4でした。そこまで高くなかったと思います。というのも、最初のオーディションで大失敗をしてしまいまして…(笑)

失敗といいますと、どのようなことがあったのですか?

僕の場合は、自分の持ち込んだ曲をオーディションで演奏しようと思って準備していたんですが、伴奏の入ったUSBを試験直前で無くしてしまいました。おそらく、時差ボケでぼーっとしてたんだと思いますが…(笑)それで、仕方なくそのままオーディション会場に行って、ジャズスタンダードを演奏したんですけど、あんまり評価はよくなかったですね

それは大変でしたね。それからどのように授業を選択されたのですか?

心の中で「やらかしたー(笑)」と思ったんですけど、そこで気持ちを切り替えて、レベルがRの授業を取りに行きました。

レベルRというのはどういう意味しょうか?

バークリーのアンサンブルの授業は、基本的に数字が付いていて、自分の振り分けられた数字以上の授業は取れないんです。たとえば、「レベル3の人がレベル4のアンサンブルの授業を取れない」みたいな感じです。ただ、その中でも例外があって、Rとついた授業に関しては、生徒のレベルが関係なく、その授業で教える先生が、直接生徒をオーディションしてから決めるというものでした。レベルRの授業は、学生の演奏レベルも高く、人気のある先生が教えていることが多かったので、「その授業を絶対受けたい!」と思い、その先生方に片っ端からメールを送って、オーディションを受けさせてもらいました。結果、ピアノのレオ・ブランコ*という先生のオーディションに合格して、その授業を取らせてもらえることになりました。また、その先生がチャリティーコンサートやるときに、バンドメンバーとして誘ってもらえたりもしました。

レオ・ブランコ…ベネゼーラ出身のピアニスト、作曲家。テレス・ブランチャードやパット・メセニーなどジャズの一流アーティストと国境を超えて活躍する。

レベルRという意味はそういうことだったのですね。

はい。その最初の学期はそれで良かったのですが、やはり自分のレーティングを上げたいと思い、その後、学期ごとに数回あるオーディションを受け直しました。しばらくたって、自分のレベルが一番上の8に上がった頃から、学校からイベントのお誘いが頻繁にメールで来るようになって、学校外でも演奏の機会が増えましたね

レーティングは大切なんですね。

もちろん、レーティングの数字が低い授業でも勉強になるものはたくさんありますし、レーティングがあまり高くない生徒でも楽器が上手い人はたくさんいます。でも、少しでも自分のレベルを上げておくと、積極的にイベントに誘って頂けたり、学校内外のアーティストと知り合える機会は増えると思いますね。

「自分の人生が変わったと今は思っています」

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斎藤さんがバークリーに入学されるまでの経緯を教えてください。

僕の両親は、クラシックギタリストで、幼い頃から家にギターがあり、両親から指導してもらっていたのですが、当時は体を動かすことの方が好きで、小学校では主にスポーツをやっていました。しかし、中学生の時に学園祭でバンドを組むことになり、「ベースがいないから」という理由でベースを始めることになりました。そこから、ベースに熱中するようになり、「もっと音楽をしっかり勉強したい」という気持ちが大きくなってきました。そこで、母親の知り合いの方にそのことを相談したら、甲陽音楽学院という学校を紹介してくださって、その学校に入学することにしました。

高校から音楽の学校に通っていらっしゃったのですね。

そうですね。どうせなら自分のやりたいことを勉強したいと思いましたし、両親も音楽に理解がある家庭なので、そのような決断をしました。それで、甲陽に入学後、しばらくたったある日、たまたま北海道グルーブキャンプというイベントのチラシを学校で見かけたんです。その内容が、毎年札幌にバークリーの教授の方を招いて、学生に1週間ジャズを教えるというものでした。僕はその時ジャズをすごく勉強していて「もっとジャズが上手くなりたい、知識を深めたい」と思っていたので、そのイベントに応募し、参加しました。そこで、バークリーアワード(バークリーの夏期講習に無料で参加させてもらえる権利)を頂いて、バークリーのファイブウィークに参加することになったという感じです。

なるほど。では、そこからすぐにバークリー留学されることを決断されたのですか?

いえ、そこからも留学するかどうかは結構悩みました。というのも、ファイブウィーク後に、バークリーから奨学金が頂けたのですが、金銭的な問題で両親から「全額奨学金をもらえないと、バークリーには留学させてあげられない」という話でした。しかし僕は、ファイブウィークに参加して「バークリーに行きたい!」という気持ちがとても強くなっていたので、日本の浜松であるバークリーの入学試験を受け直すことを決めました。

それで全額奨学生になられたんですか?

そうですね。正式な通知は合格通知と一緒に来たのですが、その前にスペインから電話が掛かってきたんですよ(笑)最初は「こんな知らない電話に出たら、高い電話代を請求されるだろうな」と思って無視してたんです。ただ、そのあとも何回も何回も電話が繰り返し掛かってきて、しかたなく電話に出たら、バークリーのオフィスの方で、「滋慶学園グループ(甲陽音楽学院を運営する学校法人)が寄付者となっている奨学金が新設され、あなたが第1期生の全額奨学生に選ばれたから、1週間後にある大阪での授与式に来なさい!」と言われました。その時は「1週間後ってなに!?」とは思いましたね(笑)

電話越しに、いきなりそのようなことを言われると驚きますよね(笑)

正直びっくりはしたのですが、結果バークリーに留学する道がひらけたので、とてもありがたいことだと思っています。父親もバークリーに留学していたこともあり、昔からバークリーに対する憧れはあったのですが、本当に留学できるとは思っていませんでした。なので、そのグルーブキャンプに参加してから、自分の人生が変わったと今は思っています

「人と音楽をする、その時にしかない瞬間を共有する」

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ノエル・シャフリスとそのバンドメンバー

今後の活動について教えてください。

アメリカ、スペイン語圏の国を中心に活動していて、グラミー賞やラテン・グラミー賞などを受賞しているノエル・シャフリスというボーカリストのツアーのベーシストを、8月からやっていく予定になっています。そのお仕事が決まったのも、バークリーでよく一緒に演奏してたピアニストの紹介なんですが、つい最近まで「本当にあるのかな…」と心配していました。でも、実際にロサンゼルスでバンドのリハーサルがあったり、メイキング映像を撮影しているうちに、だんだんと「本当に僕が演奏するんだ…」という実感が湧いてきました。僕は、今年の冬に学校を卒業することにしているので、学校がある間はボストンに住みながらバンドのツアーを。卒業後の来年1月からは、ロサンゼルスに引っ越してノエルのツアーを続けていく予定にしています。

将来の目標について教えてください。

僕は、もともとはジャズを学びたくてバークリーに入学してきたのですが、今はジャンルを問わず演奏することが多くなりました。もちろん、自分の音楽の好みもあるのですが、僕自身「人と音楽をする、その時にしかない瞬間を共有する」ことが好きなので、PopsでもJazzでもLatinでも、自分を必要としてくれる場所があるなら、そこに参加しようという気持ちが強くあります。なので、今はノエルのバンドのように、アーティストのサポートをやりながら、「自分の音楽ってなんだろう?」ということを探って行きたいと思っています。

最後に、留学を考えている人に一言あればお願いします!

バークリーは「 自分の夢に手が届く」学校だと僕は思っています。僕自身、自分の憧れていたミュージシャンと一緒に演奏できる機会を頂けたり、夢だったツアーの仕事を頂けたりと、今までの自分では想像もできなかったぐらい、人生が大きく変わりました。もし、留学を考えている人がいて、それが可能なのであれば、一度チャレンジして欲しいと思っています。

まとめ

ベーシストとしての技術を高めながらも、周囲のつながりを大切にされる斎藤さん。いろいろなトラブルや苦難を経験されながらも、夢や目標に向かって一歩ずつ努力されている様子がとても伝わってきました。バンドのツアーや、斎藤さんの今後も楽しみですね。

斎藤さん、お忙しい中本当にありがとうございました!!

Masaaki Profile
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